落合博満の『超野球学バッティングの理屈』の凄さについて語ってみた

2003年に出版の、落合博満さんの「超野球学~バッティングの理屈~」は、野球界ではいまやバッティングの教科書的な存在になった名作です。

一体、この本の何が他のものに比べ優れているのか?私なりに分析してみましたので興味のある人はどうぞご覧ください!

まず、内容はこんな感じ

「ティーバッティングの危険性」を初めて世の中に提示した本

ティーバッティングは、ボールを叩くという要素がある分、素振りよりも楽しくできるし、短時間で数多くのボールを打つという効率のよさも兼ね備えた便利な練習です。

しかし!正しいスイングを身につけるためには、ティーバッティングは最大の欠点を持っている。と、落合さんは著書の中で強く訴えている。

それは、

 

「あれは、ボールがくる角度が悪いの。」

ティーバッティングは斜めからトスされてボールを自分の正面に立ててある防球ネットに向けて打ち込む。すなわち、右打者ならセカンドあたりからくるボールをセンターへ返すことになる。

この時のスイングは、バッティングの基本であるセンター返しをイメージしたものよりも、打球を引っ張り込むという感じになってしまう。つまり、極端にいえばファウルを打つ練習をしていることになり、実戦で目指すべき体の動きとは違ったものを覚えてしまうのだ。

ちょっと考えれば確かに当たり前のことですが、落合さんが言わなかったら全く気がつかなかったことだと思います。

なぜなら、これまでたくさんのプロ野球選手たちですら、誰も触れてこなかったわけですからね実際。

ですから、この本が「ティーバッティング撲滅」の大きな起爆剤になったことは間違いないでしょう。

それじゃあ、ティーバッティングではなく、どのような練習をすればいいのか?これについては著書の中で何個か案が出ていますので読んでもらいたいと思います。

 

「ボールの見方」一つとっても理論が深い

野球の場合ソフトボールと違い、ピッチャーが上から投げ下ろしてくるのとマウンドの高さもあります。つまり、約2メートルぐらいの高さからボールが向かって来るということです。

ですからバッターはややヘッドアップ(アゴが上がった状態)でボールをむかえることになります。

この不利な状況をどうにか改善できないか?

ということで落合さんが辿り着いた結論が・・・

 

ボールを点で追うのではなく、ピッチャー自体とそこから来るボール軌道を一枚の景色として見る

とのことでした。

スイング論に関しての本は過去にいくらでも存在しますが、このような理論は今まで誰も語ってきませんでしたし、このような感覚を言葉で論理的に伝えてしまうところが、さすがとしか言いようがありません。

 

超一流は打席に入るときの意識から全然ちがうんだなと再確認しました。

現役時代の私は、まずホームベース寄りのバッターボックスのラインを足で消し、それから時間をかけて自分の足場を固めた。球審から「早くしなさい」とせかされても、「ダメですよ。これは打者にとって生命線ですから」と言って、納得がいくまで土をならした。

これはつまり、足場のボコボコがバッティング時に微妙なズレに繋がってしまうことを問題視されています。

ただ、あんなこと球審に言えるでしょうか?

いや、一般的には無理でしょう。

でもこれが一流と、超一流の差なんだなと痛感しました。

 

「コンパクトなスイング」の定義が明確化された

落合さんは著書の中で、「大振り」についてこのように定義している。

大振りといわれるスイングは、トップの位置からミートポイントまでの一直線の軌道がないもの。つまりバットのヘッドが単に遠回りしているスイングを指す。

さらに続ける。

多くの選手は一度グリップが下がった位置からグリップを出してしまうため、結果として体が開き、バットで自分の腹を切るような「腹切りスイング」になってしまう。

要するに、上の画像のような「腹切りスイング」ではインサイドアウトの軌道でバットが出せないので、各コースに柔軟に対応するのは、かなり困難になるということなのです。

この理論を理解できると、ドアスイングとかアッパースイングとかの理論がどうでもよくなります。なぜなら本質的に重要なのはそこではないからです。

 

中村紀洋へのタイミングのアドバイス

当時の中村の悩みは、速球に差し込まれることと、外へ逃げるスライダーにあっさりやられてしまうことでした。

これに対し落合さんのアドバイスはこうでした。

始動を早くすべき。中村は左足を右足に引きつけるように上げてからボールを打ちにいく。だが、始動するのは投手が利き腕をグッと体の後ろにためた状態の時だった。私は、これをモーションに入った時に始動させるように勧めた。

これを解消したあとの2001年の成績が、2割7分が最高だった打率が.320、次の年は.294と確実にアップしたのです。

動き出しを早くするだけで、あとはふだんと同じスイングをするべきだ。

この理論は非常に単純で分かりすく、万人に当てはまる基本であると思います。

このような小学生でも理解できるくらいシンプルな理論こそ、本物の理論なんだなと思いました。小難しくて誰も理解できないような理論なんてただのゴミですからね(笑)

 

 

今や野球界では当たり前になった「軸足の使い方」の元祖

この本が世に出回るまでは、あきらかに軸足の使い方に関しての理論はフワフワしたものばかりでした。

しかし、超野球学が世に出たことで確実に、軸足についての理論が確立されました。

著書の中で落合さんが繰り返し言ってることは、軸足を動かさずに体の中心線で回転するということです。

軸足が突っ込んでしまえば、体も突っ込んでしまうということ、つまり軸足がバッティングの生命線になっている。というのが彼の理論です。

 

おそらく、この理論を否定することは不可能に近いでしょう。

それほど強力な理論だということです。

 

 

「イチロー打法をマネするのは危険だよ」

イチロー独特の打撃フォームを取り入れて力をつけようとする全ての選手へ警鐘を鳴らす。

私の知る限り、イチローの打ち方で実績を残したのは、日本ではイチローが初めてであり、現在でも彼の専売特許であるからだ。私も何度もイチローと話したことがあるが、彼は私が定義するバッティングの基本概念、そして軸足の使い方を完全に理解している。

要するに、イチローの打ち方は理にかなっているのは間違いない。けれど、高度すぎるからオススメはしない。ということを言ってるわけです。

落合さんが提示している打ち方はあくまで、万人共通の基本。それは、体の中心線を動かさないで回転して打つというもの。

イチローのように右足に体重を乗せて打つのとは全く原理が異なるのです。

これが分かると、安易にイチローの打ち方をすすめている指導者(名前は伏せますがYouTubeにたくさんいます)が、いかに勉強不足かが分かります。

 

 

トレーニングの考え方

この著書に限らず、落合さんが昔から一貫して言っているのは、野球の体は野球で作れということ。

実際、中日の監督時代のキャンプを見てみると、何時間もひたすら打たせたり、守らせたりと、完全に野球づけでした。

そして科学的なトレーニングや特別な練習というのは、ほぼありません。

 

当時のインタビューで落合さんは

「こいつら下手なんだから当然でしょ?」

その年、中日は補強なしでリーグ優勝しました。

著書の中でこのような一文があります。

成長途上にある選手は、極端にいえば休ませてはいけない。吸収率の高い時期に休んでしまうと、成長が著しく止まってしまう可能性もある。

これを聞くといかにも古臭い!と思う人もいるかもしれませんが、私はだからこそ価値があるのだと思っています。

今の時代は、科学的、データ分析、DNAなど、目新しいものにばかりにどうしても注目が集まります。

しかし、だからといって過去のものが全てゴミになるのかというとそんなことは絶対にないのです。

クラシック音楽などのように、どんなに古くても時代を超えていくものは強いのです。

そして必要とされるのです。

まとめ

落合さんの超野球学も、もう時代的には古臭い作品になってしまったかもしれません。しかし、この本には間違いなく時代を超えていく強さがあります。

どんなに科学やテクノロジーが発達しても、「本質」は変わらない。

この本の凄さは、そこに集約されるのではないでしょうか?

落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈

 

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